ロシア国内で反戦デモ参加者激減…世論はプーチン支持か

今年2月24日にロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まり、3週間以上が経過した。侵攻開始当初は、ロシアの経済状況から見ても侵攻は10日ともたないだろうと予測されていたものの、激化しながら早くも1ヶ月が経とうとしている。

国際社会から孤立することを承知の上で、経済制裁を受けてもなお姿勢を変えない、プーチン大統領率いるロシア。ロシア国内でも反戦デモが多発していると報じられていたが、局面が変わってきているようだ。デモ参加者は激減しているという。

プーチン大統領が国民から厚い支持を受けてウクライナを侵攻しているのであれば、経済制裁を決断したNATO加盟国や西側諸国の目論見が外れたことになってしまう。ロシア国内の状況は今どのようになっているのだろうか?

ロシア国内でデモの動きに変化

Dariusz SankowskiによるPixabayからの画像

2月24日、ロシア・プーチン大統領は「ウクライナの非軍事化・非ナチ化」を名目に、ウクライナに対する「特別軍事作戦」の実行を命じた。「特別軍事作戦」という奇妙な表現が使われているものの、実際に行われているのは、ロシアのウクライナに対する軍事侵攻・侵略である。

この侵攻により、2014年から続くウクライナ危機は新たなフェーズへと突入した。毎日のようにロシアによる非人道的なウクライナへの侵攻が行われてるのは、テレビのニュースなどでご覧になっていることだろう。

今月上旬~中旬の報道では、ロシア国内でも反戦デモが激化しているというものだった。それもそのはず、各国からの経済制裁により、ロシアの通貨ルーブルの価値は下落。これまで使っていた紙幣は「紙くず同然」になり、物価は上昇。マクドナルドなどの外国企業も立て続けに休業となり、ロシア国民の平穏な生活が脅かされることとなったからだ。

経済面のことを抜きにしても、政治的には緊張状態が続いていたとはいえ、ロシアとウクライナは陸続きの隣国同士。互いの地に親戚や個人的な知り合いがいたという人も少なくないはずだ。

ロシアでは多数の都市で反戦デモが行われ、逮捕者も続出した。反戦の意思を表明した小学生が逮捕されたというショッキングな映像も流された。国営テレビ職員の女性がニュースを読むアナウンサーの背後に乱入し、「プロパガンダ(政治宣伝)を信じないで あなたは騙されています」といった文章が書かれた紙を掲げ、連行されたこともニュースになった。

しかしながら今、ロシア国内で反戦デモの規模や参加人数は激減しているという。これは一体どういうことなのか。

反戦デモの規模は縮小へ

国内の反戦ムードを大きな事態と捉えたのか、プーチン大統領は、今月4日、ロシア軍に関する「偽情報」を拡散した者を最高15年の実刑で処罰するという改正刑法に署名、成立させた。当局が「虚偽」とみなす情報を発信すると処罰されるということは、すなわち「反戦」を訴えただけですぐ連行される状況となっているということだ。

実質は「戦争」である現在のウクライナ侵攻も、プーチン政権は「戦争」とは捉えていない。当然国営テレビでも「戦争」として報じてはおらず、国営テレビしか見ることのできない国民は、実際に何が起きているのかすらわかっていないのだ。ロシア国内で見られる報道のほとんどは、政権の意向にかなうものばかりとなっている。

SNSなどでの情報も統制されているが、それでも若者を中心とした層は自力で情報を得る。そして反戦の動きに賛同し、デモへ参加するなどの行動を起こすわけだが、すると国からは“裏切り者”というレッテルを貼られ、排除の対象となってしまうのだ。

人権団体によればウクライナ侵攻以降、少なくとも159都市でおよそ15000人が拘束されたというが、先述のように改正刑法が成立したことによって、反戦派の人々は動きを取りづらくされてしまっている。

実際に反戦デモに参加している人の証言でも、「今は集会を組織するのは難しいです。警察がたくさんいて、プラカードを掲げるのは極めて危険でした」とのことである。テレ朝ニュースが報じた。

依然として高いプーチン大統領の支持率

上記のように情報統制がなされているロシア国内においては、「悪いのは欧米諸国である」「すべては米国の責任」「ウクライナ国民は、洗脳されている」という情報だけがシャワーとして浴びせ続けられる。我々が常日頃から目にしている情報とは似ても似つかないこのような内容が、ロシアでは「真実」として広く共有されている。

このようなシステムは、長年かけて構築されてきた。最新の世論調査では、プーチンの支持率は71%となっており、反対は22%にすぎない。現在のロシアは、文字通り別世界になっている。

クリミア半島を一方的に併合してから8年となる今月18日、ロシア各地では大規模な集会が開かれた。ウクライナ侵攻がすでに始まっており、隣国ではロシア軍がウクライナ人を虐殺していることを知りもしないロシア国民たちは、約20万人もこの集会に集まったという。

プーチン大統領の大義名分は、「ジェノサイド(集団殺害)から人々を解放させることこそが、私たちが軍事作戦を始めた動機と目的」とのこと。大多数の国民はこれに対して疑問を挟む余地もないのだろう。

そうはいっても、ルーブルの価値の下落など、政治経済に関心のない人の生活にも影響が出ているのは確かだ。今後は経済制裁の影響で“暴力的なデモ”が発生する可能性もあるだろう。現在はデモは力で押さえつけられているものの、今後はまた違った動きを見せてくるかもしれない。

世論がプーチン失脚・打倒に変わっていくのを待つ間、ウクライナは持ちこたえられるだろうか。それともアメリカの参入になり大戦となってしまうのか。あるいは、両国が停戦・終戦を合意できる余地はまだあるのだろうか。緊張状態はなおも続く。