スキー団体で失格の高梨沙羅が心境吐露「みんなの人生を変えてしまった」

スキージャンプ女子の高梨沙羅選手が今月8日、自身のインスタグラムを更新。開催中の北京オリンピックで、新種目スキージャンプ混合団体に出場し、スーツの規定違反により1回目の得点が無効となったことに触れた。

ランダムで行われたチェックにより、多くの選手が失格となった同競技は、公平性を欠くとして、今なお物議をかもしている。高梨選手は、「日本チーム皆んなのメダルのチャンスを奪ってしまった」などと謝罪した。

失格者続出!スキージャンプ団体

ただいま開催中の北京オリンピックにおいて、今月7日、ノルディックスキーのジャンプ混合団体の1回目で、1番手の高梨沙羅選手が「スーツの規定違反」で失格となったことはすでに各メディアで報じられている通りだ。

高梨選手は伸びやかなジャンプで距離を伸ばして、103・0メートル。124・5点という高得点で1回目飛躍の2位につけたが、飛躍後に行われたランダムチェックによりスーツの規定違反がわかり、得点が無効になるという、不測の事態となった。高梨選手の号泣している様子も報じられた。

かつては、少しでも多くの浮力を得るためにゆるめに作られている印象だったスーツだが、現行のルールでは、体にかなりフィットしたサイズに決められている。公平性を保つためのルールは年々厳しくなり、毎年のように変化する。体の部位によって、基本的に男子なら1~3センチ、女子は2~4センチしかゆとりは許されないという。

飛躍前にスタート台においてチェックされるのだが、飛躍後にも抜き打ちのランダムチェックがあるという。高梨選手のスーツの規定違反が発覚したのは飛躍後だったため、高得点が出たのが確認された上でチェックの対象になったのでは、という、恣意的にチェックを受けたような印象を受ける人も多かったようだ。

その後オーストリア、ドイツと続々失格者が出て日本は8位になり、上位8位までの2回目に滑り込むことができた。さらに2回目でも、1回目飛躍で2位となりメダル争いしていたノルウェー選手に失格者が出て、波乱に次ぐ波乱、混戦模様となった。

4位入賞 高梨選手、悲痛のインスタグラム

4人が2回ずつの合計点で争う団体戦においては、1回目の飛躍の得点が無効になってしまった高梨選手の件は大きな痛手となった。だが、ここから日本が見せたのは、紛れもない心の強さだった。泣きじゃくり「自分のせい」と責める高梨選手に、チームメイトたちが「何が起こるかわからない」と励まし、高梨選手の2回目飛躍の高得点に繋がった。

前日に個人ノーマルヒルで金メダルを獲得した小林陵侑選手は、高梨選手とは同学年であり、同チーム戦にも出場した。高梨選手について、「2回目に集中して、いいパフォーマンスをしていた。沙羅は本当に強い」と評した。

2回目で、日本は3位のカナダを追い上げる意地を見せたが4位となった。気持ちを切らさずベストのパフォーマンスを尽くしたが、メダルには届かなかった。

これを受けて翌日の8日にインスタグラムを更新した高梨選手は、悲痛な思いを漏らした。「日本チームを応援して下さっている全ての皆様」と題し、真っ黒な画像を掲載。コメント部分に思いを綴った。

「今回、私の男女混合団体戦での失格で日本チーム皆んなのメダルのチャンスを奪ってしまったこと、そして、今までチームを応援してくださった皆様、そこに携わり支えて下さった皆様を深く失望させる結果となってしまった事、誠に申し訳ありませんでした」と謝罪し、「私の失格のせいで皆んなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実です」と記した。

「謝ってもメダルは返ってくることはなく責任が取れるとも思っておりませんが今後の私の競技に関しては考える必要があります。それ程大変なことをしてしまった事深く反省しております」と心境を吐露するとともに、今後の進退についても考えていることを示唆。

「私のせいでメダルを取れなかったにも関わらず、最後の最後まで支え続けてくれた有希さん、幸椰さん、陵侑、そして日本チームのメンバーの皆さま、スタッフの皆さまには感謝してもしてきません。こんな私を受け入れてくれて本当にありがとうございました。この度は本当に申し訳ありませんでした」とつづった。

この投稿に対し、「あなたは日本の誇りです」「謝ることなんて何一つないです」「胸を張って帰国してください」「本当に感動したし、ありがとうって伝えたいです」といった、励ましのコメントが相次いで寄せられている。

各国が遺憾の意を表明 レジェンド葛西もコメント

高梨選手含め、女子選手のみ計5人が競技後に失格となる大波乱の展開となった団体スキー。失格者が続出したことで、競技を主管する国際スキー連盟(FIS)には各国から批判の声が殺到しているという。

ジャンプ競技のツイッター公式アカウントでは、混合団体の結果を伝えるツイートに対し、世界各国から100件を超えるリプライが寄せられ、そのほとんどが批判的な内容だった。

「今日起こったことは非常に恥ずかしくてばかげている。女性は同じスーツで個人戦を飛んでいたのに。責任者は直ちに解雇されるべき」、「なんてひどい試合だ。ルールが不公平で不明確。すべてが混乱している!」などと困惑、糾弾する声が相次いだ。

ノルディックスキー・ジャンプで8大会連続で五輪に出場した「レジェンド」葛西紀明も、自身のブログで意見を表明し、怒りをにじませた。

「昨日の男女混合団体戦 何か裏がありそうな気もしますが・・・憶測でものを言うのはやめておきます」とまだ消化しきれていない部分があることもにじませた上で、「オリンピックでは悔し涙や嬉し涙が見たいのに オリンピックに来てまでどうしてあのような酷い涙を流させるのか!どうして残酷な涙を見なきゃならないのか!悔しくてしょうがないし、悔しさ通り越して怒りしかない!!」と悔しさ、怒りをぶつけた。