差別発言の静岡県・川勝知事が辞職を早めた理由は?リニアは進展するのか

「今度迷惑をかければ辞職」

またこのあと、みずからのペナルティーとして給与とボーナスを返上する意向を示しながらも、実は返上していなかったことも明らかになるなどし、静岡県議会では50年ぶりとなる不信任決議案が出され、1票差で否決されるという事態にまで至りました。

これを受けて定例会見で川勝知事は、「コシヒカリ発言」のほかにも女性の学力と容姿を結びつける発言など自身の不適切な発言がたびたび問題視されることについて「私の不徳のいたすところだ。常に公人の立場でいる。今度、迷惑をかければ辞職する」と述べていました。

そしてこのたび、今年度が始まって新人職員に対して「県庁はシンクタンクです。野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりということと違って、皆様方は頭脳・知性の高い方たちです」などと訓示したことで批判を集めたことによって、以前自ら宣言していたとおり、辞職することとなりました。

5月9日いっぱいで県庁を去ることが決まった川勝知事。川勝知事の辞職に伴う知事選は最速で5月9日告示、同26日投開票の日程で行われる予定となっているといいます。

川勝知事の辞職願提出が早まった理由は?

発言が問題となった当初、川勝知事は「6月定例県議会の冒頭に辞職願を提出する」という意向を示していましたが、早期辞職を求める議会側がこれに難色を示していたといい、予定より早く辞職願を提出することとなりました。

また、4月10日の記者会見では辞職時期が早まった件について、川勝知事自身は「いつでも辞任する用意はあり、なるべく早く辞めたかった。県政の空白を短くするため、きょう退職届を提出した」と説明しました。

批判がやまないことについて「私だけが原因だ。私が去るのが県民のためだ。私の言動のせいで、静岡県が厳しいことを言われるのは誠につらい。それを早く止めたかった」とし、批判の矛先が県全体に及ぶような広がりを見せたことを踏まえ、責任をとるに至ったと経緯を述べました。

また川勝知事は「(静岡県民に)迷惑をかけたのは全くもってつらいこと。私だけが原因だ。なるべく早く私が去るのが県民のためになる」とし、あらためて意図を強調しました。

約15年にわたる任期の中で最もうれしかったことを聞かれると、2013年の「富士山の世界文化遺産登録」を挙げました。また悲しかったことは2021年に熱海市伊豆山であった土石流災害だとしました。

県民へのメッセージを求められると声をつまらせる場面もあり、「本当にありがとうございましたと言うしかない。静岡県は素晴らしい。文字通り、住んでよし、訪れてよし、働いてよし、と堂々と言える」と伝えました。

川勝知事の辞職でリニアは進展する?

川勝知事の辞職ということで、多くの人が疑問に思っているのは、今後リニアモーターカーは進展するのか?ということではないでしょうか。

問題となった発言の数日後、辞意を伝えた会見の中では、辞職を決意した理由として「みずからの発言」と、「着工を認めてこなかったリニア中央新幹線について開業延期という区切りがついたこと」の2つを挙げていました。

しかし川勝知事はこれまで、リニア新幹線の”静岡工区”の工事着工を認めてこなかった一方で、これまで一貫して「リニア推進」の立場だと主張してきました。その姿勢は最後まで変わらず、辞職願を提出した後の記者会見でも、あらためて「推進派」の立場だと主張しました。

「推進派から一度も外れたことはない」「県が抱える懸念の払しょくに全力を尽くした」「早期開通の足を引っ張ってたことはない」と、自身は適切な対応をしてきたとあらためて訴えました。

この会見の数時間後、リニア沿線の各県知事は怒りをあらわにする様子も。愛知県の大村知事は「誰が何を言ってるんだ」「今回は明らかに静岡工区が6年 4~5ヶ月工事にかかれていない」とし、三重県の一見知事は
「2027年の開業断念させたのが自分の成果だといっているが行政官としては理解しがたい」としています。

とはいえ、川勝知事の辞任で一気にリニアが進展するのかというと、そういうわけでもなさそうです。いくつかのメディアは、リニア問題について「川勝知事は静岡県民の意思を汲んでいた」「静岡県には何のメリットもない」と紹介しています。

実際に、リニアは静岡県には停まりませんし、開通するトンネルの位置は大井川の源流に当たり、工事によって大井川の水量が少なくなれば流域の茶農家などに影響が出る恐れがあると指摘されています。お茶といえば、静岡県の名産品ですよね。

生態系への影響や、工事で発生した残土の処理置き場の問題も指摘されています。このように、静岡県にとってはデメリットこそあれどメリットはないということで、静岡県民からは強い反発があるようです。

静岡県民にはマイナスはあっても、何の恩恵もないリニアを推進していこうという新知事は、静岡県民からの支持も得がたいことでしょう。そのため、川勝知事が辞任したところで、リニアが一気に進展していくとは考えがたいですね。

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