「体は大きいが自分も人間」と心を痛めた朝比奈。「そういう人たちを黙らせるには、結果を出すしかない、と自分の中で強く決めた。心の炎が強くなった」と語っている。昨年4月に入学した独協医大で勉学を続ける傍ら、最大限の稽古とトレーニングを積み、今回の世界選手権優勝。実力と結果で外野を黙らせた。
敗者をおんぶで実況が称賛
先述の通り、今回ブダペストで行われた世界選手権では、激闘の末に勝ったのは朝比奈。5分を超す決勝の末、指導3の反則勝ちを収めた。しかし、敗れた冨田は右脚を負傷しており、試合終了後にその場から動けなかったのだ。
日本代表は国際大会で日本人対決となった場合、公平性を保つために畳横にコーチが入らない方針をとっている。それに加え、コロナ禍の入場人数制限もあり、近くに誰もいない状況で朝比奈がとった決断は、自ら冨田に手を差し伸べることだった。
小走りで相手の冨田のもとへ。すると、朝比奈が冨田に何か声をかけて、おんぶしたのだ。海外の実況席は「彼女(朝比奈)が何かしています。見てください」とこの場面に驚いた様子だった。
同じ実況席にいた別の人物も「おっと、なんということでしょう。見てください。これは本当に信じられない光景です」と称賛。両者は畳をおりる前には振り返り、そろって一礼。会場からの大きな拍手を受けながら退場した。
SNSでも注目を集め世界から大反響
勝ってなお相手を気遣うという、スポーツマンシップあふれるシーン。国際柔道連盟公式ツイッターが実際の動画とともに「日本のアサヒナ・サラが称賛に値するスポーツマンシップを見せた。そして世界タイトルを獲ったことに大きなリスペクトを示したい!」と紹介すると、大きな反響を呼んだ。
コメント欄には海外ファンから、「見習うべき模範」「一流の振る舞い」「最後にお辞儀したシーンが好き」「伝統とリスペクト。これぞジュウドウ」「このスポーツが最高である理由だ」と称賛の声が相次いだ。動画の再生回数は28万回を突破している。