秋元康プロデュースのアイドルグループである「櫻坂46」と「日向坂46」の2グループが、7月9日~11日の3日間にわたって、山梨県・富士急ハイランド・コニファーフォレストで野外ライブを行った。
初日は櫻坂46の単独ライブ、2日目は日向坂46の単独ライブ、そして最終日である3日目は2グループ合同のライブという、初の試みだった。また、両グループともに、全国アリーナツアーを開催するなどのサプライズ発表もあった。
乃木坂46を筆頭にいくつか存在する「坂道グループ」だが、何が何だかわからないという人も少なくないのでは。特に、後から出てきた欅坂、日向坂は何がなんだかわからないという声も聞こえてくる。そこで今回は、各グループの時系列や関係性をまとめてご説明する。
「坂道グループ」第一弾は乃木坂46
卒業生も現役メンバーも含めて、一番に知名度が高いのはやはりオリジナルである乃木坂46ではないだろうか。乃木坂46は、「AKB48の公式ライバル」として、2011年に結成されたアイドルグループだ。
「SKE48」「NMB46」「HKT48」などの各地域の「48」グループが大もとの「AKB48」の傘下にあるという関係性とは異なり、「乃木坂46」はAKB48からは完全に独立した存在として活動。そのため、選抜総選挙などにも参加しない。
乃木坂46の卒業生として有名なのは、今は女優として活動している生駒里奈(いこま りな)、西野七瀬、白石麻衣などだ。また現役メンバーでは、齋藤飛鳥、知的なイメージの生田絵梨花、バラエティにもよく出演している高山一実などがいる。
第1作目から第5作目までは生駒里奈がセンターを務めたが、6作目では白石麻衣がセンターを担当。その後のシングルは、楽曲によって流動的に違うメンバーがセンターを務める形となった。とはいっても、活動初期に固定センターを務めた生駒里奈の業績は大きいだろう。
欅坂46 不動のセンター平手友梨奈
乃木坂46から遅れること数年、「坂道グループ」の第二弾として結成されたのが、「欅坂46」だ。2015年に乃木坂46の単独ライブ(3周年ライブ)で、「乃木坂46 新プロジェクトメンバー1期生募集決定」と発表された。
2万名以上が応募したオーディションの中から選ばれた22名(のちに1人辞退)が、欅坂46として活動を開始。「乃木坂46新プロジェクト」という名目で集められたメンバーだったが、待っていたのは想像とは全く違う活動内容だった。
乃木坂46は、AKBがセクシーな格好をするのに対し、あまり肌の露出もしない「清楚系」な王道アイドルグループ。続く欅坂も同じ路線でいくのかと思いきや、そんな期待をデビュー曲「サイレントマジョリティー」で大きく裏切り、世間を震撼させた。
欅坂46のデビュー曲「サイレントマジョリティー」は、社会への反抗や自分の道を進むことを主張する歌詞が印象的な楽曲だ。センターに立ったのは、当時14歳で中学2年生だった平手友梨菜(ひらて ゆりな)。
センター平手のカリスマ性にプロデューサーの秋元康氏もベタ惚れだというのは有名な話で、デビュー曲から8作目に至るまで、他のメンバーらのポジションは流動的に変わる中、平手だけは唯一フロントのセンターの位置に立ち続け、「不動のセンター」となった。
デビュー曲から第8作目まで、一貫として世間への反抗や大人への疑問、自分に正直に生きることなどをテーマとした楽曲を届け続けた欅坂46。「笑わない」「クール」といったイメージや、激しいダンスパフォーマンスの印象を世間に植え付け、これまでの「アイドル」とは違う世界観を確立させた。
欅坂46から櫻坂46に改名
欅坂46に転機が訪れたのは、第9作目のシングルの制作期だ。2019年に、第9作目も平手がセンターとして制作されることが発表されたのだが、発売日程の見直しのアナウンスなどが相次いだかと思えば、その年末の「NHK紅白歌合戦」でのパフォーマンスを最後に、年明けに不動のセンター平手友梨奈が脱退してしまったのだ。
そのために、予定されていた9作目は空中分解する形となってしまった。また、はっきりとした理由は未だに明確には説明されていないが、平手の脱退から半年ほど経って、「欅坂46」の5年の歴史に幕を閉じ、改名して再出発することがアナウンスされた。
芸能関係者やファンの見方に従って解釈するならば、世間からの「欅坂46」のイメージがあまりにも不動のセンター平手と結びつき過ぎていたことや、2020年に元所属メンバーらのスキャンダルなどが相次いで報道されたことで急低下してしまったグループイメージからの脱却を図ったのではないかと思われる。
「欅坂46」としての活動に終止符を打ち、2020年10月には「櫻坂46」に改名して再出発を図った。欅坂46時代に貫いていたような、「社会への反抗」「大人への疑い」といったイメージは100%捨てきったわけではないが、以前ほどのダークさはない。大人の女性へと脱皮したかのようなイメージだ。
その一方で、欅坂46時代からのウリだった、激しいダンスパフォーマンスは今も健在だ。当時は平手の影に隠れてしまっていたメンバーたちも、数年かけてしっかり基礎を固めていたということの表れだろう。
もともと欅坂46のアンダーグループだった日向坂46
それでは最近バラエティ番組などで引っ張りだこの「日向坂46」はなんなのかというと、今では独立してデビューを果たした彼女たちだが、元々は「欅坂46」のアンダーグループである「けやき坂46」(通称:ひらがなけやき)として活動を開始させたのだ。
なぜこのようなグループが結成されたのかというと、大きく関わってくるのが、欅坂46の元メンバー・長濱ねるの存在だ。もともと長濱は、前述の欅坂46の一期生のオーディションに参加していたのだが、最終オーディションを前に親の猛反対に遭い、地元・九州に連れ戻され、辞退することとなった。
その後意気消沈してしまった長濱を見た両親が、欅坂46の運営サイドに相談をし、運営サイドが厚意で乃木坂46の福岡公演のライブに両親と長濱を招待し、アイドル活動というものを見せ、家族で再度話し合うよう促したという。
そしてその後特例として欅坂46の新メンバーとして加入することになり、他の一期生からは多少遅れたものの、活動を開始させたのだ。
とはいえ、長濱は最終オーディションを受けずに辞退してしまったので、これは本当に特例中の特例。オーディションで落ちてしまった候補者にも、勝ち抜いたメンバーたちにも、アンフェアになってしまう。
そのため長濱には当初、欅坂46のアンダーグループ的な存在である「けやき坂46」のメンバーとして活動することが認められた。しかしその場合長濱はひとりとなってしまうため、急遽として「けやき坂46」の追加メンバーも募集されることとなったのだ。
そしてオーディションの末に集まった「けやき坂46」の仲間たち。長濱はのちに「欅坂46」の専任となり、長濱以外のメンバーたちだけが「けやき坂46」として活動し続けることとなった。
その後もアンダーグループ的な存在としてではあるが、多くのファンを獲得してきた「けやき坂46」。欅坂46に頼らない形での単独ライブも数多くこなしたが、楽曲は常に「欅坂46」のCDの中に収録されるもので、単独デビューはできないまま数年を過ごした。
そんな彼女たちの努力が認められたのが、2019年。それまでは欅坂46のアンダーグループ的な立ち位置で活動してきた「けやき坂46」が、ついに「日向坂46」に改名し、シングルデビューを果たしたのだ。
現在は乃木坂46・櫻坂46・日向坂46の3グループ
上記のような経緯があったため、現在は違う道をいく「櫻坂46」および「日向坂46」の2グループが、もとは同じ名前のもとで活動していたために、今回の「W-KEYAKI FES.」という名前の合同ライブを開催するに至ったのだ。
現在は、吉本興業の芸人たちで構成されている「吉本坂46」を除けば、アイドルグループとしては乃木坂46、櫻坂46、日向坂46の3グループが存在していることとなる。今後も秋元康氏による新「坂道グループ」が登場することとなるのか、それとも全く違うテイストのプロジェクトが計画されているのだろうか。なんにしても、アイドルに興味のない層にとっては非常にややこしい話かもしれない。