コカコーラCMも非公開に
その数時間後には、バンドのフロントマンである大森元貴も謝罪文を発表。「類人猿が登場することに関しては、差別的な表現に見えてしまう恐れがあるという懸念を当初から感じておりました」と説明。
そのうえで「類人猿を人に見立てたなどの意図は全く無く、ただただ年代の異なる生命がホームパーティーをするというイメージをしておりました」「決して差別的な内容にしたい、悲惨な歴史を肯定するものにしたいという意図はありませんでした」とし、あくまでもフィクションだったと説明しました。
またこうした懸念から、「意図とは異なる伝わり方」を避けるべく、スタッフとの確認を重ねていたといった経緯を説明しつつ、「ある事象を、歴史を彷彿とさせてしまうMVであったというご指摘を真摯に受け止め猛省」しているとしました。
キャンペーンソングとして起用していた日本コカ・コーラも、報道各社に「コカ・コーラ社はいかなる差別も容認しておりません。今回の事態を遺憾に受け止めております」とのコメントを出し、今後は楽曲「コロンブス」による広告展開を控えるとしました。またMVの事前確認はしていなかったと説明しました。
MVの非公開という迅速な対応、レーベル等の謝罪やソングライターである大森元貴の謝罪文、そしてコカコーラからの声明など、批判を受けてからの対応は迅速でした。それでも、炎上が収まる気配は今のところないようです。
なぜここまで炎上?コロンブスはどんな人物だった?
アメリカ先住民が類人猿であったかのような描写は確かによくないですが、それでもなぜここまで炎上したのか?という疑問も湧きますよね。その背景には、ここ数年で「コロンブス」の人物像への解釈が変わってきている流れが世界的で起きているからかもしれません。
アメリカ大陸に到達したことで知られる(本人はその生涯において、自身が到達したのはアジアだと信じていましたが)、探検家のコロンブスですが、もう一つの顔は、侵略者であり奴隷商人としての側面です。
なお、かつては「新大陸の発見」と表現していましたが、現在では「発見」という言葉の代わりに「到達」とする流れも出来ています。発見も何も、もともとそこにはアメリカ先住民が暮らしていたからです。
最初は温和でコロンブスたちの言うことをよく聞いていたという先住民たちですが、コロンブスらが先住民らに奴隷労働を強いるなどし始めると、彼らも次第にコロンブスらの行動に疑問を抱き、抵抗するようになったといいます。
するとコロンブスらは、暴力的な行動に出始め、非人道的な弾圧と強奪を繰り返し、女性を性的奴隷とし、従わない者の手首を切り落とすなどしたといいます。先住民らは武器を持っていなかったので、抵抗も容易ではありませんでした。
またその間、コロンブスたちがヨーロッパから持ち込んだ病気によって島では死者が増えていったとも知られています。これらのことを鑑みると、大冒険家として知られるコロンブスですが、先住民らにとっては侵略者・征服者以外の何者でもないですよね。
そんなコロンブスを賛美するかのような内容で、かつアメリカ先住民が類人猿だったかのようなMVの楽曲が、グローバル企業であるコカコーラのタイアップとなったわけで、コカコーラが批判を受けて慌てて提携を取り下げるのも納得がいきますよね。グローバルビジネスの場においては、人種差別はもちろんタブーです。
ミセスは2023年にはNHK紅白歌合戦に初出場し、今若者の間で人気の、勢いのあるバンドなだけに、ここで勢いを落としてしまうのは勿体ないこと。今後の挽回に期待したいものです。
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