巨人(読売ジャイアンツ)は今月8日、ポスティング申請をして今オフの米大リーグ移籍を目指していた菅野智之投手(31)が、巨人に残留することが決まったと発表した。
菅野は交渉期限であるアメリカ東部時間7日午後5時(日本時間8日午前7時)を前に、1日に渡米して最終的な検討を重ねてきた。
しかし球団によれば期限を前に交渉を打ち切り、巨人でプレーする決断をした連絡を球団に入れたという。
巨人への残留が決定した菅野の今後の年俸にも注目が集まっている。
今シーズン後にメジャー再挑戦か
菅野は球団を通じ、以下のように経緯を説明。今回メジャー進出を断念することになったのは、少なからずコロナ禍が逆風となったことがあるようだ。
今回のポスティング手続きを通じて、交渉していただいたMLB球団はじめ手続きに関与されたMLB関係者の皆さまには深く感謝を申し上げます。
今月1日に渡米してさまざまな方々から話を聞き、新型コロナウイルスの影響が深刻化する中でMLBなどの今シーズンの動向を見極めた結果、今季も読売巨人軍でプレーしようという結論に至りました。
(中略)
1年浪人して入団した経緯や私の思いを尊重し、ポスティング申請を認めていただいた読売巨人軍には感謝しています。
原監督やチームメートたちと日本一奪還を目指し、今シーズン後に改めて自分の夢、将来を考えたいと思っています。
応援していただいているファンの皆さまのご期待に応えられるよう、リーグ優勝と日本一奪還に向けて全力を尽くします。
中日スポーツ
神奈川県出身の菅野は東海大相模、東海大を経た後、1年間の野球浪人期間を過ごし2012年ドラフト1位で巨人に入団。
1年目から開幕ローテーションの柱として活躍し、13勝を挙げた。2年目には防御率2・33で初タイトルとなる最優秀防御率を獲得し、シーズンMVPに輝いた。
2018年には最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手3冠を達成し、2年連続の沢村賞を受賞。
また2020年には開幕投手としては史上初となる開幕13連勝を達成し、20試合に投げ14勝2敗、防御率1・97でリーグ2連覇に貢献した。
年俸金額も争点か
米スポーツ専門局ESPNのジェフ・パッサン記者がツイッターで以下のように報じたことを、アメリカのスポーツ紙なども拡散している。
「日本のスター、菅野智之は交渉期限までにメジャー球団と合意できず、2021年は日本プロ野球への復帰が決定。複数の情報筋が明かした。来オフFAとして大リーグ移籍が可能」
Japanese star Tomoyuki Sugano did not come to an agreement on a contract with a major league team before his posting window expired and will return to Nippon Professional Baseball for 2021, sources tell ESPN. He will be eligible to come to MLB as a free agent before 2022 season.
— Jeff Passan (@JeffPassan) January 7, 2021
米報道によれば、菅野側は2019年1月に菊池雄星投手がマリナーズと結んだ4年総額5600万ドル(約58億2000万円)以上という希望条件を譲らなかったという。
米スポーツ専門局ESPNは「菅野は自身の価値について明確な考えを持っている。その金額に見合うと考えるメジャー球団はなかった」と報じた。
今月3日時点ではメッツ、ブルージェイズ、SFジャイアンツ、レッドソックスと交渉中と伝えられていたが、4日にメッツの撤退が判明。
当初は大リーグの10球団前後が交渉に臨む見込みだとされていたが、期限直前の最後の最後まで交渉していたのは2球団だったようだ。
米メディアによれば、巨人は4年総額4000万ドル(約41億6000万円)で契約に合意。さらに菅野側が望めば毎オフに契約を途中破棄できる3度の「オプトアウト権」も付けたと報じられている。
金額が報道通りであれば、年俸に換算して年10億円4000万円。プロ野球歴代最高年俸で2003年~04年のペタジーニ(巨人)の7億2000万円を抜いてトップに立つこととなる。
原監督「監督としては最高の形に」
菅野の残留を受け、監督の原辰徳氏はコメントを発表。
「菅野智之は巨人軍のエース、大黒柱であり、一緒に戦えることをうれしく、頼もしく感じています。監督としては最高の形になりました」
と、まずはエースの残留に安堵を見せた。さらにリーグ3連覇へ向け、
「今季、戦う上で坂本、菅野は中心選手です。先頭に立ってチームを引っ張ってもらいます」
と今後にもさらなる期待を込めた。リーグ3連覇、そして日本一を目指す原巨人にとっては、願ってもない残留だ。
巨人は菅野流出を想定し、DeNAからFAした井納を獲得。成長著しい3年目の戸郷、来日2年目のサンチェスらで先発ローテを構成する方針だったが、一抹の不安があったのも確かだろう。
そんな中、昨季は開幕13連勝をマークし、最多勝と最高勝率の2冠に輝いた絶対エースが急転、残留。大黒柱がいるといないとではやはり雲泥の差だ。
昨季はセ・リーグを独走でリーグ連覇を果たした巨人。菅野の残留で今年はそれ以上に突っ走る下地が整った。