ジョコビッチ敗訴で全豪オープン出場ならず!強制退去で海外メディアうんざり

男子テニスシングルス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(34)=セルビア=は今月16日、オーストラリアへの入国ビザ(査証)が再び取り消され、国外退去となった。海外メディアも、これをスポーツのトップ級で報じた。

全豪オープンに出場するためのジョコビッチのビザをめぐっては、オーストラリア入国時に書類不備があったとのことで一悶着あり、ビザが取り消されることに。一度は、ビザ取り消しを無効にするという判決が下されていた。

しかし、また話がひっくり返った。入国審査時の書類に虚偽の申告があったとして、ふたたびビザの取り消しが決定されると、すべては裁判所へと委ねられる形に。結果として、ジョコビッチのビザは取り消され、強制退去となった。

ジョコビッチ騒動、何が起きた?

男子テニスの世界ランク1位で、今月17日開幕の全豪オープン出場に意欲を見せていたノバク・ジョコビッチ(セルビア)のビザ取消しに関して、オーストラリアの連邦裁判所は、ジョコビッチ側の不服申し立てを却下した、と各メディアが報じている。

全豪オープンは、テニスの四大大会のひとつ。世界ランキング1位であるジョコビッチにとっては、同大会4連覇と、前人未到の四大大会21度目の優勝が懸かっていた。

事の顛末をざっくばらんに言うと、過去に新型コロナウイルスに感染しているということを理由にワクチンを接種しなかったジョコビッチに対し、ワクチン未接種での渡航を認めてしまったオーストラリアのビクトリア州政府の不手際があり、それに対してオーストラリア国民の反対感情が高まったことも相まってか、裁判でジョコビッチが敗訴することとなったようだ。

騒動を時系列で確認 ビザ取り消され強制退去へ

新型コロナウイルスのワクチンが開発されてからというもの、ワクチン推進派と反対派がいるという状況は日本でも見られるが、同じように海外の諸国でも見られる。健康面での安全性への懐疑などが大きな理由だ。

ジョコビッチも、ワクチン接種に反対していることは明らかであった。2020年4月の時点で、すでに「私はワクチン接種に反対だ。移動のためワクチンを強制されたくない。もしそれが義務になれば、私は決断しなければならない」と語っていたという。

同年6月には、自身主催のチャリティー大会で複数の感染者を出し、自身も感染するという事態が起きた。これがジョコビッチにとっての1回目の新型コロナウイルス感染である。

そして、昨年2021年の全豪オープンでは3連覇を果たした。今年の全豪オープンには当然出場予定で、4連覇を期待されていたものの、2021年11月の時点で、全豪オープンの責任者が2022年大会について、「選手のワクチン接種義務化」を発表したのだった。その時点では、ジョコビッチは接種状況を明かさなかった。

その発表の翌月である12月に、再び新型コロナウイルス感染。そして、年が明けて2022年1月、大会開催地であるメルボルンのある州、ビクトリア州の政府が特例でジョコビッチのワクチン接種を免除したと発表し、ジョコビッチは大会出場に向けメルボルン空港に到着したのだった。それが1月5日の深夜のこと。

すると、ワクチン接種を免除されていたはずだったジョコビッチは、国境警備隊によって入国を拒否される事態に。ビザは取り消され、隔離施設に収容されたのだ。

これを受けてジョコビッチの弁護団が強制送還差し止めの訴えを裁判所に起こし、入国から数日経った1月10日の時点で裁判所からは「ビザの取り消しの取り消し」という判断が下され、大会出場に向けてトレーニングを開始した。

すでに対戦相手も決まっていたのだが、14日に再び話が動いた。異例の事態が認められたことでオーストラリア国民の反対感情が高まったためか、あるいは入国時の書類に不備(虚偽申告)が見つかったことが大きく作用してか、政府によって再びビザが取り消された。理由は、「健康と秩序」とされた。

ジョコビッチの弁護団は再び裁判所へ異議申し立てをするものの、裁判所は政府の決定を支持する形となり、敗訴。ジョコビッチは強制退去せざるを得なくなった。

ジョコビッチは、「私の申し立てが裁判所に棄却されたことに非常に失望しています。これで私はオーストラリアに滞在することも、全豪オープンに出場することもできなくなりました」との声明を発表。「私は裁判所の判決を尊重し、出国に関して当局に協力します」とつづったという。

海外メディアはうんざり・・・ライバル選手も「疲れた」

保健行政を担うビクトリア州政府が、ジョコビッチの6ヶ月以内の感染歴を理由に「接種免除」の書類も発行していた。それを信じて渡豪したジョコビッチ本人が責任を被り、帰国しなければならないというのは気の毒にも思えるが、世間の反応は冷ややかのようだ。

入国審査書類の虚偽記載は特に、反対感情を高めることへと繋がったようだ。SNS上では、「当然だ」「だれも法を超越できない」などのコメントが見受けられた。

スポーツ選手に特例が認められるのかは定かでないが、法律上は、オーストラリアで一度ビザを取り消されると、今後3年間はオーストラリア入国が禁じられる。3年間となれば、次の全豪にはもちろん出場できない。相性が良い大会に出られないことは痛手となるだろう。

海外メディアの一部は、「何日間もの混乱の末、ジョコビッチの全豪オープン出場を巡る壮大な物語がついに最終章を迎えた。コート外のドタバタ劇に当てられたスポットライトが、今年最初のグランドスラムを舞台の袖に追いやった」と評し、本来の大会ではないところに注目が集まってしまったことに苦言を呈している。

ライバル選手の発言にも注目が集まっている。ジョコビッチと肩を並べ、四大大会最多20勝のラファエル・ナダル(35)=スペイン=は「この状況に疲れた」とうんざりした様子だ。

同調する選手もいる一方で、ジョコビッチとは不仲で「犬猿の仲」とまで言われているニック・キリオス(26)=オーストラリア=は、「彼は自分の都合でここにいるのではなく、最高のテニスを披露するために来たんだ」とジョコビッチを擁護した。

混乱を招いた協会は明確な対応をしないまま、17日に全豪オープンは開幕した。なぜ今回のようなことが起きたのか、反省が求められることだろう。