北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が25日、北朝鮮国内で新型コロナウイルスの発症例があったことを初めて認めた。
そんな中で週刊誌「フライデー」が、近日金正恩氏が、北朝鮮に関する悪いニュースが相次いでいることにブチ切れまくっていると報じている。
北朝鮮はこれまで新型コロナウイルス感染者はゼロとしてきたが、一説によれば死亡者数はすでに500人に上るともされている。
ついに認めた新型コロナ発生

金正恩氏は25日、緊急招集された党政治局の非常拡大会議で「悪性ウイルスが流入したとみられる危険な事態が発生した」と述べた。
実質これは、北朝鮮が新型コロナウイルス感染者の発生を初めて認める発言をしたこととなる。
北朝鮮の国営朝鮮中央通信が26日付で伝えたのは▽「開城(ケソン)で感染の疑い例」が発生▽これを受けて党政治局が「非常拡大会議」を緊急招集した――の2点。
同紙によれば、「この悪性ウイルスに感染したと疑われる人物は違法に境界線を越え、7月19日に戻ってきた」と伝えた。
[adsense]いわく、韓国にいた脱北者が7月19日、南北軍事境界線を越えて3年ぶりに北朝鮮・開城に戻ったのだという。
その人物に検査を施したところ、「新型コロナ感染が疑われる釈然としない結果が出た」という。
その人物を隔離する一方、帰郷後の5日間に接触のあった全員を割り出し、検診・隔離措置を取ったとしている。
しかし韓国では、境界線を越えて北朝鮮に入った人物がいるという報告はないという。まだ確認すべきことは多いようだ。
こうした事態を受けて緊急に開かれたのが、「非常拡大会議」。金委員長が取り仕切る形で進められた。
金委員長は、「致命的かつ破壊的な災厄につながりかねない…危険な状況」に対処するためだと、この会議の意義を説明。
また、新型コロナウイルスを封じ込めるため「最大非常態勢を取り、最高クラスの警報を出す」ことを決めた。金委員長は、
「この6カ月間、全国的に各方面での強力な防御的防疫対策を講じ、すべてのルートを閉鎖したのに、悪性ウイルスが流入したとみられる危険な事態が発生した」
と新型コロナウイルス感染拡大へ危機感を募らせた。報告を受けた直後の24日午後から開城を完全封鎖したとも述べた。
北朝鮮はこれまで、海外からの帰国者や外国人らに隔離措置を施した事実を明らかにしながらも、「わが国は感染者が1人もいない『清浄国』」と主張してきた経緯がある。
だが今回はこの立場を一転させた形となる。韓国紙の中央日報も「北朝鮮が都市全体の封鎖措置に乗り出したと明らかにするのは今回が初めて」とも位置付けている。
隔離対象者は39万人
[adsense]韓国の有力紙、朝鮮日報は今月10日付で、「北朝鮮の内部事情に詳しい消息筋の9日の証言」として、
「北朝鮮で5~6月、新型コロナウイルスの感染状況が悪化した」「6月末現在の時点で、新型コロナ感染に伴う死者が500人を突破した」「隔離対象者は39万人」「死者が急速に増えている状況」と報じた。
上記の情報が正しいのであれば、6月時点で500人を突破した死者数は、現在すでにそれを上回っていることであろう。
証言の中には、「5~6月の田植え動員で学生・住民・軍人らが1カ所に集まって働いた」「6月初めに各地の学校が新学期を迎えた」などの理由から集団感染が起きた可能性に言及したものもある。
同紙はまた、「(北朝鮮の)内部では感染拡大の勢いが収まらず、防疫に苦慮している」と伝えた。
加えて同紙は外交消息筋の話として、「北朝鮮には中国やロシアからキットが提供されており、検査は可能」と明かした。
一方で新型コロナ患者が亡くなっても、『急性肺炎』に分類され、遺体は全て通常の様式で火葬している」とも伝えている。
金正恩氏ブチギレの理由は?
冒頭にも述べたように、フライデーは金委員長の度重なる「ブチギレ」の様子を報じている。
各メディアでもおなじみの、『コリア・レポート』編集長の辺真一氏が語っているということだ。
「正恩氏は7月18日に行われた党中央軍事委員会拡大会議に出席しましたが、終始不機嫌で、参加者を怒鳴り散らしていました」
[adsense]「眉間にシワを寄せ激高したようにまくし立てる場面が何度もあったんです。手の指で卓上を叩き、会場の軍人を何人か立たせるシーンもあった。正恩氏が激怒する映像が流れるのは、極めて異例です」
と、通常では放送されない激怒の様子をカメラが捉えたという。音声は消されていて定かではないが、軍の規律が乱れていることではないかと同氏は推測している。
最近、軍ではワイロや女性兵士への性行為強要が頻繁に行われているからだ。
こういったトラブルは実際に軍の担当者から金正恩氏に報告されることはないという。
しかし正恩氏は毎日のように外国の報道をチェックしている。同会議の直前には、米国CNNのインタビューで脱北者が軍の規律の乱れについて赤裸々に話しており、それを見て正恩氏は、真実を知り激怒したのではないかということだ。
この激怒の翌日、平壌総合病院の建設現場を視察した際にも激怒している様子がキャッチされた。
過去に某工事現場の衛生状況を見て、激怒した金正恩氏は担当者を即銃殺したとも言われている。今回も叱責された建設現場担当者は死を覚悟したことだろう。
新型コロナウイルス感染拡大を食い止めるためにも、金正恩氏がどうしても同病院を予定通りに完成させたいのは理解できる。
しかし無茶な工程がたたり、病院の建設現場では労働者が転落するなど20人以上が命を落としているという。
軍の規律の乱れ、経済停滞、コロナ感染拡大ーー。相次ぐ悪い知らせに、正恩氏のイライラは募るばかり。
現状を打破するために肝いりプロジェクトをゴリ押し、人民の生活はさらに逼迫しているということだ。